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弁護士の日記帳

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ナッシュ氏の訃報に接して - ほろ苦い青春時代の思い出とともに

アメリカ人数学者ジョン・ナッシュ氏(86)が5月23日に夫人と共に交通事故で死亡したとの報道に接しました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150525-00050002-yom-int
その偉業、統合失調症による闘病生活、妻の献身などの半生は、アカデミー作品賞受賞映画『ビューティフル・マインド』(ロン・ハワード監督・2001年米国)に描かれ、世界的に広く知られています。
偉大な有名人が亡くなった、ただそれだけのことなのかもしれません。

 

でも私にとってその偉人は、ほろ苦い青春時代の思い出とセットで存在しているのです。

 

ナッシュ氏は、ゲームの理論を構築し、経済学に応用した業績により、1994年にノーベル経済学賞を受賞しています。
ゲームの理論の父ともいうべき人です。
私が出来の悪い経済学部生だったのは、1985年から1989年。
今でこそゲーム理論は立派な学問の一分野となり、「ナッシュ均衡」なんて言葉くらい誰でも知っていますが、当時はまだまだ萌芽期で教科書なども存在していませんでした。
何を間違えたか、私は「経営科学」(金融工学などともいう)というゼミに所属し、この「ナッシュ均衡」すなわち絶対優位な戦略が存在しない非協力ゲームにおける最適解なるものと格闘していたのです。
ゼミの指導教授は工学博士でしたし、テキストは英語でしかも意味不明の数式がたくさん羅列されていました。
あまりに難解で、2年間のゼミが苦行であったことは言うまでもありません。
ゼミの選択を誤ったと後悔したものです。

 

大学を卒業して5年程してナッシュ氏のノーベル賞受賞の報に接したとき、ノーベル賞の理論を学んだこと(ただし理解はしていない)を誇らしく思ったものです。
その5年後くらいに映画『ビューティフル・マインド』を見て、「これが私を苦しめたナッシュ均衡のナッシュさんなんや。どんな人かと思ったけど、いい人やん」と妙に感心したものです。

 

ゲームの理論の発展に多大な功績を残した 偉人の死に哀悼の意を表して、合掌。
(横井盛也)

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「法曹人口の在り方について」2 ~ 決定的に欠落している将来を見通す能力

2015年はスティーブン・スピルバーグの傑作「バック・トゥー・ザ・フューチャー2」の設定年です。
1955年から1985年に帰還したマーティの前にドク(ブラウン博士)が現れ、マーティの息子がトラブルを起こす未来を回避するため、ガールフレンドのジェニファー共々デロリアンで30年先にタイムトラベルするというお話。
劇中の2015年では、車が空を飛び交い、宙に浮くスケボーで人が移動し、靴紐は自動的に結ばれ、秒単位で天気予報が的中していました。

 

1963年に日本初の国産テレビアニメとして放映された手塚治虫の傑作「鉄腕アトム」は、2003年生まれのロボットという設定でした。
人間の心を持ち、涙も流す。どんな計算も瞬時にできる電子頭脳を持ち、100万馬力の原子力モーターで最大マッハ5(宇宙空間ではロケットに切り替わり最大マッハ20)で空を飛び、人間の1000倍も聞こえる耳とサーチライトの目を持つ正義の味方でした。

 

どちらも設定年の現実は、劇中の未来とは程遠いものです。
旧態依然。昔と変わり映えがしない進歩のない世界です。
(ただし、「鉄腕アトム」に関しては、携帯電話が唯一、設定の未来を超えていたと話題になりました)
でもそんなことはどうでもいいのです。
エンターテイメントなのですから劇中の未来にワクワクし、夢見ることができればよいのです。

 

しかし、現実社会の政策に関して言えば、50年後、100年後とまでは言わなくとも10年後、20年後くらいまでは的確に見通して立案することが必要です。
前回のブログで、この国の役人、弁護士、学者は、先例をあてはめるのは得意であっても将来を見通す力が決定的に欠けていること、仮に司法試験の合格者を年1500人としても9年で弁護士の数は5万人に膨れ上がることを指摘し、近い将来だけでなく、10年後、20年後を見据えた議論が必要であることを述べました。
政策立案はエンターテイメントではないのです。

 

司法制度改革、就中法曹人口の問題に関していえば、10年前に現在の状況をどれだけ正確に見通していたのでしょうか。
法科大学院設立当時、誰も法曹養成制度の明るい未来を信じて疑っていませんでした。
たった10年足らずの間に法曹志願者がジリ貧に陥り、合格レベルが急落し、法科大学院がいくつも閉鎖され、需給の不均衡から食えない弁護士が巷間にあふれる惨憺たる現実を正しく見通していた役人、弁護士、学者が何人いたというのでしょうか。
10年前の想定と現実とのギャップについて検証すべきです。

 

これまでの教育に欠けていたのは、将来を見通す力の涵養という部分だったように思います。
「未来予測学」なんて学問群があってもよいのではないでしょうか。
大学教育の必修科目にしてもよさそうです。

 

優れた経営者は、常に5年後、10年後を見据えて行動しているはずです。
少なくとも政策立案等に関与する議員や役人になろうとするのであれば、10年後、20年後の予測と現実とのギャップについて検討する、不断の努力が必要ではないかと思うのです。
バラ色の未来だけを語る無責任は許されません。
(横井盛也)

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「法曹人口の在り方について」 ~ 誤った現状認識と甘い将来の見通し

内閣官房法曹養成制度改革推進室が今日、「法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ案)」を法曹養成制度改革顧問会議に提出しました。
今後、政府方針として正式決定される見込みです。
全文はこちら↓↓↓
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai20/siryou5.pdf

 

社会の現状を正しく認識することも将来を的確に見通すこともできておらず、失望です。
いつまでかかって、何をしているのか。
腹立たしい限りです。

 

抜粋すると
「法曹人口は、全体として今後も増加させていくことが相当であると考えられる。」
「司法試験合格者数…の規模については、…一定の相当性を認めることができる。」
「法曹の輩出規模が現行の法曹養成制度を実施する以前の司法試験合格者数である1500人程度にまで縮小する事態も想定せざるを得ない。」
「何らの措置も講じなければ、司法試験合格者数が1500人程度の規模を下回ること になりかねない。

しかし、司法制度改革において掲げられた法の支配を全国あまねく実現するという理念の下で、今後も、法曹ないし法曹有資格者の活動領域の拡大や司法アクセスの容易化の進展が必要であることに変わりはない。

…1500人程度 は輩出されるよう、必要な取組を進め、更にはこれにとどまることなく、

…今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきである。」

 

想像を絶する法曹志望者の減少、驚愕の域を超えた合格レベルの低下といった現状を正しく認識していないことは明らかです。

この国の役人、弁護士、学者は、先例をあてはめるのは得意であっても、将来を見通す力が決定的に欠けています。
仮に年1500人としても9年で弁護士の数は5万人に膨れ上がるのです。
近い将来だけでなく、10年後、20年後を見据えた議論が必要です。

 

「何らの措置も講じなければ、司法試験合格者数が1500人程度の規模を下回ること になりかねない。」――意味不明です。
なぜ、合格者1500人という数が出てきて、それを下回らないよう措置を講じなければならないのか。
これまで何年にもわたって議論され、必死になって措置を講じても法曹養成制度は機能不全に陥り、司法の崩壊という危機に陥っているのです。
何の措置も講じずに1500人程度の規模を下回るのであれば、それに越したことありません。
(横井盛也)

 

参考までに過去の当ブログです。

http://www.law-yokoi.com/blog/?p=1091
http://www.law-yokoi.com/blog/?p=867
http://www.law-yokoi.com/blog/?p=691

http://www.law-yokoi.com/blog/?p=659

http://www.law-yokoi.com/blog/?p=631

 

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民主主義を実感した住民投票 ~ 大阪は世界一です

70万5585票と69万4844票――僅差で「大阪都構想」は否決されました。
ドラマ以上にドラマチックな住民投票でした。
二分する論戦に民主主義の成熟を実感し、感動すら覚えました。
大阪は、世界で最も民主主義の発達した都市であるといって過言ありません。
その市民であることを誇りに思います。

 

ここ数週間、街は言葉では言い表せない熱気で満ち溢れていました。
多くの市民がこれほど熱心に自分の住む町の将来を考え、議論し、行動したことがあったでしょうか。
街宣車が走り回ったり、候補者や政党関係者が演説を行ったりといったことは通常の選挙でも普通に見られる光景です。
でも今回は、街のあちこちで一般の市民がハンドマイクを片手に演説を行っていたのです。
駅前で演説を行っていた双方のグループが自然発生的に論戦を始め、それを大勢の通行人が見物し、大いに盛り上がるといった光景も目にしました。
いたるところでパレードが行われていましたし、ビラやパンフレットの種類も半端ではありませんでした。
市民の会話の冒頭は、「どっちに入れるか決めた?」だったのです。
投票率は66.83%ですが、大阪市の行く末を真剣に考えた率はほぼ100%だったのではないでしょうか。

 

開票後の橋下市長の会見も見事なものでした。
「負けは負け」、「政治家は僕の人生から終了です」、「要らなくなったら使い捨てにされる。これが一番健全な民主主義」、「悔いはない。思う存分やらせていただいた」、「(引退後は)弁護士をやりますから」。
これほどの政治家がこれまでいたでしょうか。立派です。

 

結局は、大阪市が存続することになったのですが、住民投票に至るまでのプロセスが無駄なものだったとは思いません。
徹頭徹尾、民主主義。

大阪の底力を見せつけた「大阪都構想」だったのだと思います。
(横井盛也)

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明後日に迫った住民投票 ~「大阪市解体→地盤沈下」構想

住民投票が明後日に迫っています。
街には各種ポスターが貼られ、街宣車が走り回っています。
駅頭や自宅で受け取ったり投函されたりしたビラやパンフレットは何種類にも及びます。
大阪市内の盛り上がりは空前絶後です。
通常の選挙どころではありません。

 

今朝、京都の弁護士から、1通のメールが届きました。
「突然ですが、都構想住民投票に関する先生のブログを拝見して、メールを差し上げました。」
「投票は明後日です。まだ、決めていない人、どちらに転ぶか分からない人、橋下の一言で賛成になってしまいそうな人たちに向けて、圧倒的な宣伝をすることが肝要と考えます。」
「添付の図は、都構想の本質を3秒で理解できるものです。」
「賛成多数という結果になって後悔しないよう、先生におかれましても、添付のファイルを様々なチャンネルで拡散していただきますようお願い致します。」

 

今回の住民投票は、結果次第では大阪の地盤沈下、ひいては関西の、いや日本全体の衰退をも招きかねない重大なものなのです。
↓↓↓ 送られてきた図をここに貼り付けておきます。↓↓↓
osaka-kaitai-hantai
 

ところで、メールを下さった京都の先生。
覚えていらっしゃらないようですが、23年前にお会いしています。
私が新聞記者で、先生は新人1年目でイソ弁をされていました。
お久しぶりです。
(横井盛也)

 

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