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「イスラム国」の暴挙-国際法の無力

「イスラム国」が邦人2人の人質を殺害した行為は卑劣極まる蛮行であり、断じて許すことはできません。

 

世界は決して平和ではなく、微妙なパワーバランスで成り立っています。
現行日本国憲法のいう「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」して、9条を守れば日本の平和が保たれるという考えが幻想に過ぎないことは、本件やその背景にある中東情勢からも明らかです。

 

ところで、「イスラム国」(Islamic State=IS)は、シリアとイラクの領域の一部を実効支配し、2014年6月に国家樹立を宣言しましたが、国家として承認されているわけではありません。
あくまでイスラム教スンニ派の武装勢力、過激テロ組織です。

 

しかしながら、各種報道等によると、実効支配地域内では税金を徴収し、省庁や治安組織も構築して次第に国家としての体裁を整えつつあって、少なくとも800万人の住民を統治下に置いているとされています。

 

彼らの「国家」は、これまでの国家の通説的理解、すなわち「一定の領域、永続的住民及び政府を備え、政府が対内的に実効的支配を行うとともに対外的に他の主体から独立して行為することができるもの」(1933年:国家の権利義務に関する条約)とは異なります。
そもそも彼らは、英仏露が領土分割のために1916年に秘密裡に結んだ「サイクス・ピコ協定」に不服で、イラクとシリアの国境線の打破を目標の1つにしていましたから既存の国境線などお構いなしですし、拡大を目指す実効支配領域に国境線など必要ありません。
複数国家の一部を支配し、それでいて国家としての体裁を整えつつあるところが不気味です。

 

国家とテロ組織の戦闘は、国家間の戦争より対処が困難です。
国家間の戦争のように国際法に基づいた降服や講和などといった概念も通用しません。
戦闘員と民間人の区別がつかないテロ組織のゲリラ戦に終わりはなく、戦闘が泥沼化することは必至です。
国家的規模にまで成長してしまったテロ組織をどう封じ込めるのか。
一筋縄ではいきません。

 

交通や通信の進歩により、国境を越えて人、物、金、情報が行き交うグローバル化が進めば進むほど国境線の持つ意味は相対的に低下することでしょう。
未来永劫、世界の国々は国境線を持つ国家として存続し続けることができるのでしょうか。
そんなことまで考えさせられる事件でした。
(横井盛也)

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