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獄中死の悲報-誤った有罪判決

これまで150件以上の刑事事件の弁護人をしてきましたが、その中でたった1件、心に引っかかり続けている事件があります。
裁判員裁判の下した判決は有罪。
裁判所が判断を誤ったと唯一確信している事件です。

 

覚せい剤密輸事件。経緯の特殊さ、容疑をかけられた女性の特性、発見された覚せい剤の量の多さなどから、マスコミがひどい人権侵害報道を繰り返した事件です。
でも、彼女は絶対に無罪です。騙され、何も知らずに運び屋にされた被害者です。

 

その彼女が大阪医療刑務所で病死したと親族から連絡がありました。
「その節はありがとうございました」と言われても、彼女の無念を思うと胸が痛むばかりです。

 

逮捕直後から何度も接見しました。
栗毛色だった髪は約1年間の裁判の間に真っ白になり、別人のように衰弱し元気がなくなっていきました。
彼女は、スーツケースが細工されていることなど微塵も疑ってもいませんでした。
空港税関職員も発見することができなかったほどの巧妙な細工です。
スーツケースを取り換えた犯人の外国人は結局行方不明のままです。
運び屋をさせられているということを少しでも疑っていたのであれば説明できない言動を彼女はたくさんとっています。
動機もありません。
罪を逃れようとしてウソをつく被告人がいることは事実ですが、何度も接見して彼女に限っては絶対に「白」と確信しました。

 

判決を読み返してみましたが、弁護側の主張を理屈にならない屁理屈で悉く排斥しています。
裁判長が法廷で発した「評議でいろいろな意見がでましたが、結論は有罪となりました…」という言葉から、有罪か無罪かで意見が割れたことがうかがわれます。
が、結局は「懲役4年、罰金100万円、…」。(検察官の求刑は「懲役9年、罰金400万円、…」)
たった10日間の法廷審理で何がわかるのか、というのが正直な気持ちです。
別の弁護士が控訴審と上告審を担当しましたが結論は変わりませんでした。

 

ごく普通のOLとして定年まで勤め上げ、幸せに暮らしてきた彼女が最後の約5年間に味わった絶望、無念、苦しみを思うとやり切れません。
無実の人を救えなかった自らの非力を恥じるほかありません。

冤罪を救えなくてごめんなさい。
せめて安らかに。ご冥福を祈ります。
(横井盛也)

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