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東電OL殺害事件について思うこと

東京電力OL殺害事件の再審で無罪判決が確定しました。

ネパール人男性の冤罪からの救済は果たされましたが、逮捕から15年もの間、異国で身体の自由を奪われ、名誉を害されたことの苦痛は筆舌に尽くしがたいものがあったに違いありません。

検察や裁判所は大いに反省する必要がありますし、私も司法の末端に連なる者として、この事件を重く受け止めなければならないと感じています。

 

この事件は、東京高裁で逆転有罪となり、最高裁もそれを支持したのですが、そもそもの東京地裁(平成12年4月14日)は無罪判決でした。

この地裁判決は、数々の情況証拠を合理的に認定できるものとそうでないものとを明確に分類した上で、被告人が犯人であると推認させるのに積極に働く間接事実と消極に働く間接事実の双方について詳細かつ的確な評価を行い、真相を鋭く見抜いています。

「現場からは全くの第三者の陰毛が三本発見されているほか、そのうち一本は、被害者のショルダーバッグ取っ手から検出された血液型と同一であり、客観的には、右陰毛の由来者も、被告人同様、犯人としての資格を有することになりえ、さらに、そのような陰毛の存在や被害者の行動等からすると、被害者が犯行現場であるアパートを独自に使用した可能性を完全には否定しきれない。」と指摘していますし、被告人が犯人だとすると矛盾したり、合理的に説明が付けられなかったりする数々の事実の存在も指摘しています。

大淵敏和裁判長、森健二裁判官、高山光明裁判官の慧眼に敬服するほかありません。

マスコミは、今回の再審無罪判決を受けて、検察は自らの主張の過ちを認め、検証をせよとの論陣を張っています。

正論ですが、マスコミも素直に過ちを認め、深く検証し、大いに反省すべきだと思います。

被害者の行状が大々的に報道され、亡くなった被害者、そのご家族や関係者らに多大な苦痛を与えたこと、被告人が真犯人であるかのように強く印象付ける過剰報道を行ったことは紛れもない事実だからです。

(横井盛也)