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弁護士の日記帳

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人は信じたい情報しか信じない

ゴーマニズム宣言の小林よりのり氏が「ごーまんかましてよかですか?」と問うや、次のコマで眉間にしわを寄せて叫んでいます。
「人は信じたい情報しか信じないのである!」

 

 4月25日発行の「開戦前夜」(幻冬舎・1400円)の第2章<日系ブラジル人「勝ち組」が信じたい情報>は、終戦から何年間にもわたる日系ブラジル人移民コロニアにおける混乱の様子がリアルに描かれていて衝撃でした。

日本が戦争に勝ったと信じ込み熱狂する大多数の「勝ち組(信念派)」は、「負け組(認識派)」を国賊として次々に暗殺する一方で紙切れとなった旧紙幣を高く売りつける「円売り詐欺」や帰国のために開拓した農地を二束三文で手離させる「帰国詐欺」に引っ掛かり、なけなしの財産と自己アイデンティティーを失います。 

 

彼らを笑うべきではありません。

自分が信じていることが誤っているのではないかと一度は疑ってみること、人の意見に耳を傾け冷静に判断することは大切なことですが、正しい情報を的確に解釈することは容易なことではありません。

自分が信じていたものが誤りであったと認めることはとても辛いことです。
人間がマインドコントロールにかかりやすい動物であることを歴史から学ぶべきでしょう。 

 

2000年11月1日。法曹人口の大幅増加などを巡って深夜まで討議が続けられた日弁連の臨時総会で多数を占める熱狂的な改革推進派は強行採決を行いました。

改革推進派は、日本の司法が良い方向に向かうはずだとの信念に基づいて行動したのだと思います。
が結果、先人が築き上げてきた日本の司法を崩壊に転ずるものでしかありませんでした。

日弁連は司法制度についての発言力すら失いました。

 

人間の能力など限られています。急進的改革は危険です。
今あるものには先人賢者の智恵が隠されているのではないかと謙虚に疑う姿勢が必要です。
誤りに気付いた場合には、勇気を持って誤りを認めるべきです。
誤りかもしれないと恐れつつ、「改革は漸進的に行うべきである」というのが私の信念です。

(横井盛也)

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東京から見える富士山

 「○○と煙は高い所に上りたがる」とはいいますが、私も高い所に上りたがるのです。○○なのでしょうか?

 

東京スカイツリーは長い行列に並ばなければなりません。

でも眼下を見下ろすなら池袋のサンシャイン60の展望台で十分です。

オープンした35年前には超人気でしたが、今やガイドブックにも掲載されない完全な穴場スポットです。

好天に恵まれ、関東平野が360度一望でき、高校生の娘、中学生の息子も大はしゃぎです。

夕日が沈んでゆくところをじっくりと眺めることができました。

 

そして今朝、ホテル23階の客室からくっきり、はっきり富士山を見ることができました。

東京から富士山が見えるというのは、葛飾北斎の富嶽三十六景の中だけの話とばかり思っていました。

東京のど真ん中から富士山が見えることに感動し、大阪人であることを再認識したGWでした。

(横井盛也)

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後日追記:この記事を出した翌日、ユネスコの諮問機関であるイコモスが富士山につき世界文化遺産登録勧告を出しました。大変喜ばしいことです。

 

裁判の帰趨を決める証人尋問

裁判の最大の山場は証人尋問です。民事、刑事を問いません。

真実はどうだったのか、どちらの主張が正しいのかを裁判官の心証に直接働きかけるチャンスであり、これによって裁判の帰趨が決まるといっても過言ではありません。

4月後半は、この証人尋問が立て続けにあり超多忙でした。

身も心もくたくたです。

 

特に難しいのが、敵性証人に対する反対尋問。

事実を1つ1つ確認しながら外堀を埋めて行って、最後に核心的な質問を一気にたたみかけてトドメを刺す。

矛盾点についての説明を求められて黙り込む証人に対して、

「暫く待ちましたが、無言ですね。これで質問を終わります。」

常にこんな見事な尋問ができればよいのですが…。

 

セオリー本は数多く出版されているのですが、そんな小手先の技術や表面的な知識でどうにかなるものではありません。

語るに落ちて自滅してくれる饒舌な敵性証人など滅多にいませんし、下手な質問をすると、説得的な証言で壁の上塗りをされてしまいます。

細心の注意を払いながら矛盾点を突かなければなりません。

 

必要なのは十分な事前準備と研ぎ澄まされた集中力とたゆまぬ自己研鑽。

弁護士というのは奥の深い仕事だと常々感じています。

(横井盛也)

 

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連続ドラマW 「罪と罰 A Falsified Romance」(全6話)

ドストエフスキー(1821~1881)の世界的文学「罪と罰」を現代日本に完璧なまでに蘇らせた大作といってよいでしょう。

人はなぜ人を殺してはいけないのか。罪とはどういうことなのか。罰とは何か。

重厚な哲学的テーマを圧倒的な質感で描いた芸術です。

 

着想をドストエフスキーの「罪と罰」から得ているというだけで、現代社会の病理を鋭くえぐった奥深い人間ドラマです。

繊細かつダイナミックな心理描写と細切れのカットを次々に小気味よく展開するスリリングなストーリーの進行に目が釘付けにされたという感じです。

長編小説を一気に読み終えたときのような心地よい余韻に浸っています。

 

主人公は上京後に大学をドロップアウトした小説家志望の引きこもりの青年・裁弥勒(高良健吾)。

「今こそ彼は資格を得て、ためらうことなく彼の収穫物を摘み取ろうとしていた。夏の光が降り注ぎ、横たわるそれと立ち尽くす彼を画然と分け隔てていた。心は静かに定まって、自分の鼓動さえ遠く聞こえた。自分は手に入れるだろう。約束された収穫を…」。

文学新人賞の佳作で殺人者の心理を描いた弥勒は、目の前の不条理に義憤を抱き、援助交際グループを支配する女子高生・馬場光(橋本愛)の殺害を計画します。

「崇高な目的の達成が流された血をあがなうだろう。」

奪い取る者と奪い取られる者が存在する社会の不条理に対し、自分の未来を手にいれるための正義の手段。

その計画は完璧と思われたのですが…。

 

弥勒の前に現れる苦悩と絶望を抱えた飴屋英知香(水川あさみ)、裏の社会で生きる謎の男・首藤魁(田中哲司)、心理戦により弥勒を追い詰めていく五位蔵人検事(伊武雅刀)、弥勒の心の屈折のカギを握る弥勒の母(萬田久子)。

様々な人とのかかわりの中で弥勒の心は動揺していきます。

 

台詞の一つひとつが文学的で格調高く、印象的なフレーズが耳から離れません。

首藤は「欲望を肯定しろ。地獄こそが楽園だ。」、「邪悪で冷酷。これが人間の本性だ。」、「猥雑で残酷。だから世界は美しい。」と弥勒に向かってうそぶきます。

弥勒は「力を持つものがそれを行使することが罪なのか。力を持たないことは罪なのか。」、「ちっぽけでささやかな喜びも悲しみも一顧だにせず押しつぶす残酷で霊験な摂理を神というなら、この人生、残酷な運命を出し抜いて上に立つこととて同じなのではないのか。」と自問し、「僕の人生が絶望の荒野なら、行く手を照らす光が君なんだ」と英知香に語ります。

英知香は、「愛情が暴力なんて、意味わかんない。」と叫び、五位検事は「この事件の犯人が資格を持った非凡人だと思いますか。」と弥勒に迫ります。

 

時代に取り残されたようなさびれた風景と物悲しいソロピアノのメロディーがドラマ全体を盛り上げています。

巨匠ドストエフスキーとの共作により人の心に宿る狂気を描くことに成功した数年に1本という珠玉のドラマだったと思います。

 

総合評価は、★★★★★。お奨めです。

 

2012年4月から6月までWOWOWで放映されていたようです。

DVDをTSUTAYAで借りることができます。

(横井盛也)

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弾劾裁判所はどこにあるのか?

国会の裁判官弾劾裁判所が、電車内で女性の盗撮を行った大阪地裁の判事補に対して罷免の判決を言い渡したとの報道に接しました。

罷免判決は戦後7人目。この判事補は、法曹資格を失いました。

司法に対する国民の信頼を失墜させる不祥事です。残念でなりません。

 

日本経済新聞には、法廷の写真が掲載されています。

普通の裁判所の法廷の様子とそっくりです。

ところで、弾劾裁判所ってどこにあるの?

 

裁判官弾劾法3条には「裁判官弾劾裁判所及び裁判官訴追委員会は、これを東京都に置く。」としか定められていません。

気になって調べてみました。

で、わかったこと。

弾劾裁判所の法廷は、参議院第2別館内南棟9階にあります。

 

なお、罷免によって判事補は法曹資格を失いましたが、「罷免の裁判の宣告の日から5年を経過し相当とする事由があるとき」には、弾劾裁判所は「罷免の裁判を受けた者の請求により資格回復の裁判をすることができる。」と定められています(裁判官弾劾法38条)。

これまで罷免判決を受けた6人のうち3人が資格回復を果たしています。

(横井盛也) 

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