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日本国憲法改正について 7

衆議院選挙で、自民党は291議席と公示前より4議席減らしたのですが、公明党は公示前より4議席増の35議席を獲得し、結局与党の合計は326議席と公示前と同じでした。民意の選択は「現状維持」ということなのでしょう。
とにかくここで大切なことは、衆議院において憲法改正の発議に必要な「総議員の3分の2以上」を維持したということです。
温存すれば国益を損ないかねない現日本国憲法の改正に向けて歩を進めてもらいたいものです。

 

ところで、現日本国憲法の41条には、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」とあります。
国の唯一の立法機関であることに問題はないと思いますが、果たして「国会は、国権の最高機関」と定めることが適切なのでしょうか?
確かに、国会は、「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」(67条1項)、「国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。」(64条1項)と首相の指名権、裁判官の弾劾の権利を有していますし、国会議員には、不逮捕特権(50条)、発言・評決の免責(51条)が認められるなど強大な権力が与えられています。
だからといって「国権の最高機関」というのは、権力分立の趣旨に反するのではないでしょうか。

まるで、対義語である権力集中を規定しているかのようです。

 

権力分立は、権力が単一の機関に集中することによる権利の濫用を抑止するため権力を分離し、各権力相互間の抑制・均衡を図ることで、国民の権利・自由の確保を保障するするシステムです。
歴史の中で培われた現代国家に共通の普遍的な憲法上の基本原理といってもよいでしょう。もちろん現日本国憲法も権力分立を採用しています。
国会の立法に対して違憲立法審査を行うのは司法ですし、内閣の助言と承認に基づいて天皇が国会を召集し、衆議院を解散します。
憲法改正の承認は国民投票によります。

 

ロシア革命のスローガンは「すべての権力をソビエト(議会)に」というものでした。
すなわち、民衆は議会への権力集中を目指したのです。
しかし、ソ連が誕生し、議会が成立した後、権力は共産党に、さらには共産党の一部の幹部に集中していったことは紛れもない史実です。

 

浅薄な思慮の下で国会を「国権の最高機関」と謳い上げることは、独裁を生み出す危険を孕んだものであり、無意味なだけでなく有害だというのが私の意見です。
(横井盛也)

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