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法科大学院への補助金傾斜配分-議論の過ち

文部科学省が、来年度に法科大学院に配分する補助金の増減比率を公表したと報道されています。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO82054060X10C15A1CR8000/
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150117-OYT1T50023.html

 

規模に応じて機械的に割り振っていた方法から司法試験の合格実績や教育プログラムの内容に応じて現行比135~50%の差をつけて配分する方法に改めるというもので、実質的な平等を目指す改革として評価できそうです。

 

根本的な発想は、「法科大学院修了者の司法試験の合格率が20%台で低迷し、法曹志願者が減少する一因となっている。」というものです。
何としても法科大学院の再編を促し、修了者に対する司法試験の合格率を高めたいと考えているのです。
今回の傾斜配分で法科大学院52校のうち42校が削減の対象となり、経営困難から募集停止や統廃合がますます加速することは間違いないでしょう。

募集停止や統廃合が進むこと自体は悪いことではありません。

 

でも根本的な発想が誤っています。
逆です。
司法試験の合格率が高過ぎるからこそ法曹志願者が減少しているのです!

 

合格しても法律事務所に就職できない、過当競争で下手をすれば食っていくことすら難しい、そんな弁護士の現状が伝えられる中、法曹を目指そうという若者などいません。

 

司法試験の合格率や合格者数を激減させれば、法科大学院への入学希望者は激増するはずです。
かつて合格者が500人の時代、毎年約2万人の受験生が合格率2~3%の試験に挑んでいたのです。
合格者全員が就職できる(ボスの下で修業が積める)という程度の合格者数に絞れば、さらに給費制を復活させれば、安心して法科大学院を志望することができ、法曹を目指す者の数は増えるはずです。

 

日弁連会長が「自由と正義1月号」の年頭所感で、若者の法曹離れが急速に進行していることを嘆き、法曹養成制度の改革が最重要かつ喫緊の課題だと述べておられます。
そして、「地域適正配置と多様性の確保に留意しつつ、法科大学院の統廃合と定員の大幅削減を進め、その教育水準の向上を図ること」、「司法試験の合格率を向上させ、合格者をます年間1500人程度とすること」などに会を挙げて取り組んでいくとしています。

 

国際化の時代に狭い日本、地域の適正配分など考慮する必要があるのでしょうか。
飽和状態が言われて久しいのにまだ年間1500人の合格者が必要なのでしょうか。

 

ところで今回の傾斜配分比率の決め方なのですが、
「早稲田大は、海外のロースクールへの派遣プログラムなどが評価されて45%が加算され、最も高い135%になった。…東大は法曹実務を英語で学ぶ授業などで35%加算、同志社大は海外大学との単位互換プログラムなどで35%加算となった。」(日経新聞27.01.17)
と報じられています。 疑問です。

 

以前のブログにも書きましたが、法科大学院は、法律実務家を養成する場に徹するべきです。
最低でも2~3年は試験合格を目指して必死になって覚えるべきことを覚え、書いて書いて書きまくるほどの大量の起案をして基礎力をつける時期が必要です。
<合格するまでは合格するための勉強に専念する>といったストイックな環境を提供するのが法科大学院の使命なのではないでしょうか。

 

法社会学や比較法文化論などといった科目は試験後に独学すればよいと思いますし、法曹倫理は合格者を対象に司法研修所で学ばせるべき内容だと思います。
まして海外留学や英語で授業を受けるくらいなら、1本でも多くの訴状や準備書面を起案すべきだと思います。
(横井盛也)

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