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弁護士の日記帳

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二兎追う者は一兎を得ず

年末の衆院選に続いて、今年の7月には参院選が行われます。

安倍総理の「金融緩和と財政出動と成長戦略の3本の矢で、強い経済を取り戻す」という公約に異論はありません。

ねじれを解消して決められない政治から脱却し、国民生活の安定や景気の回復が実現することを期待したいと思います。

 

ところで、衆院選において一躍全国区となった日本維新の会は、自治体の首長と参院議員の兼職を禁止する地方自治法の改正案を次期国会に提出しようとしているようです。

橋下徹代表代行が大阪市長のまま参院選に立候補できるようにすることが主な目的なのでしょう。

しかし、そもそも橋下市長は、「二院制など不要」と広言する参院廃止論者でした。

国会議員にはなりたいけれど、大阪都構想を実現するとの公約を掲げてしまっている以上、市長職を投げ出すわけにはいかない。そんな自らの都合により、自説を翻したように思えて仕方ありません。

 

そもそも自治体の長は、国会議員を兼務できるほど閑職なのでしょうか。

住民の直接選挙で選ばれた自治体の長が国政でも発言力を持つべきという発想は素晴らしいものだと思いますが、そうならば全国知事会や全国市長会の権能を高める等の方策を立案・主張するのが筋だと思います。

 

「維新八策」では、国会改革として、参院の廃止と衆院議員を240人に半減することが謳われています。

国会議員の減らしたところで削減できる額など国家財政の規模と比して極めて微々たるものです。

国会議員の半数は国民のために働いていないということなのでしょうか。 (でも自分なら働けると考えているとしたら傲慢の極みです。)

 

政治家たるもの、大衆受けするパフォーマンスではなく、細心かつ緻密な言葉の積み重ねによって良識を語るべきだと思います。

(横井盛也)

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弁護士会の研修

大阪弁護士会の弁護士は、年間10単位(=10時間)の研修を受けることが義務付けられています。

研修といっても講義を聴くだけで、出席すれば内容を理解しようがしまいが単位はもらえます。

ライブ講義のほかにビデオ講義も豊富に実施されており、空いた時間に様々な講義を聴くことができるので大した負担にはなりませんし、役立つ情報も得られます。

どの講義もしっかり準備されており、聴けばそれなりの効果は得られるはずです。

私も講師をしたことがありますが、2時間の講義のためには相当の準備が必要です。

 

でも、研修により能力が向上すると考えるのは断じて間違いです。

何十時間の講義を聴くことよりも、依頼者の話にしっかりと耳を傾け、相手の書面を読み込み、文献や判例を徹底的に調べて考え抜き、何度も推敲を重ねて書面を仕上げる実務の1件の方がよっぽど能力の向上につながるはずです。

研修は、あくまでも補完に過ぎません。

 

ところが大阪弁護士会は、研修によって弁護士の能力が飛躍的に向上すると考えているようです。

例えば、弁護士会のサラ金相談担当者になるためには関連する6単位を取得することが必須要件とされています。

例えば犯罪被害者支援の研修を受ければ、犯罪被害者支援精通弁護士として事件紹介名簿に登載されます。

さらには今後、裁判員裁判の国選弁護人の推薦人名簿への登載は、法廷でのプレゼンテーション能力を高めるための実演型研修を受講した者に限ることにしています。

実演型の研修を受ければプレゼン能力が向上すると考えているのでしょうが、2日程度の研修で飛躍的な能力の向上は不可能です。 (ただし、研修における評価に基づいて名簿登載の可否を判断するというのであれば、ある程度有効な方法だと思います。)

 

 

その分野に精通した弁護士を相談担当者にし、事件紹介名簿に登載するというのであれば、その分野の実務経験を基準にすべきだと思いますし、プレゼン能力の高い者を裁判員裁判の国選弁護人推薦名簿に登載したいのであれば、実際の法廷でのプレゼン能力を評価して決めるべきだと思います。

(横井盛也)

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裁判の証拠

「証拠がないからどうせ裁判しても勝てませんよね」と控えめにおっしゃられる相談者がたくさんおられます。

確かにそのとおりかもしれません。

でも待ってください。証拠が揃っているなら裁判をするまでもありません。

決定的な証拠がないからこそ裁判になるのです。

 

日頃から何事につけ証拠化を心がけていればよいのですが、そんなことは不可能です。

ビジネスの世界でも、日常取引についての基本契約書を交わしていない、担保の設定をしていないといったケースをよく目にします。

「証拠がない」といっても、よく話を聞いてみると立派な証拠が存在する場合があります。

単なるメモ、メールの送受信記録、とりとめのないことを記した日記帳などなど。

探してもなければ、最後は尋問です。

民事訴訟は、双方の当事者のうち、どちらか一方が嘘をついているといったことがよくあります。

証言も立派な証拠です。

公平中立な裁判所にどちらが真実を語っているのかを判断してもらうのです。

 

でも、紛争が起こらないよう予防できれば、それに越したことはありません。

 

近年、交通事故の裁判において、ドライブレコーダーの存在により尋問もなく早期に裁判所から和解案が提示されるケースが増えてきました。

略してドラレコ。

車両に大きな衝撃が加わると、前後十数秒の前方映像、時刻、速度等を自動的に記録する優れものです。

DVD等にデータを落とし込みパソコンで再生すると事故の態様が一目瞭然です。

2012年4月、京都・祇園で18人の死傷者を出した暴走車事故の映像の衝撃をご記憶の方も多いと思います。

 

まだまだ普及率は低いようですが、普及すれば、双方ともが「青信号で交差点に進入した」と主張するような泥仕合は激減し、訴訟経済に大きく貢献することは間違いありません。

カーナビは標準装備化され急激に普及しました。次は、ドラレコの番だと思います。

(横井盛也)

座右の書③

「六法全書」

 

法律家にとって、最も近くに置くべき座右の書に違いありません。

司法試験の勉強中、家族法の泰斗である恩師が、「法律家になるなら条文を大切にしなさい」と語っていたのを思い出します。

まず、条文を読んで考え、その後、教科書や判例を読んで考え、そしてまた条文を読んで考える。これこそが法律解釈力をつけるための王道だというのです。

含蓄のある大学者の言葉です。

シリーズの③で取り上げることの不覚を恥じ入る次第です。

でもご心配なく。常にデスクに鎮座していますので。

 

法律の条文は、味気も素っ気もないものですが、条文を的確に解釈し、事実にあてはめて魂を吹き込むのが法律家の仕事です。

 

たいていは法規の文章の意味をその言葉の使用法や文法の規則に従って解釈すればよいのですが、不都合が生じる場合には、法規自体の目的や趣旨、社会の要請などを考慮しつつ、法規の意味内容を目的論的に解釈することが必要になる場合もあります。

また、社会の実態に沿うように判例によって法の欠缺(不備ないし不存在)を埋め、法を形成することもあります。

 

例えば、旧民法709条は、故意または過失により「他人ノ権利」を侵害した者は、それによって生じた損害を賠償する旨定めていました。

それゆえ、大審院は大正3年の判決で、著作権のない浪曲の無断録音レコード販売について、たとえ正義の観念に反していたとしても「権利」の侵害はないと条文の文言通りの判断をしました。

ところが、大審院は、大正14年の判決で、「大学湯」という暖簾の売却について、具体的な権利でなくても「法律上保護セラルル利益」があるとして損害賠償請求を認めるに至ったのです。

この考え方は、その後も脈々と受け継がれて運用され、平成16年の民法改正で、条文上も「他人ノ権利」は、「他人の権利又は法律上保護される利益」と改められました。まさに解釈が法の欠缺を埋め、法を形成した一例です。

 

ところで、法律の条文は味気も素っ気もない、と書きましたが、日本国憲法の前文だけは例外です。

私は、改憲論者ですが、格調高い次の一節がお気に入りです。

「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。」

 

平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去する。

これこそが人類の究極の目標なのだと思います。

(横井盛也)

謹賀新年

旧年中は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。

 

2012年4月、本ブログの冒頭で

「やりたい仕事は山ほどある。社会正義の実現、不正義からの救済、冤罪事件からの解放、新判例の樹立などなど。大きな目標は、目の前にある1つ1つの事件の適正な処理を通じて達成される。迅速、丁寧、的確な事件解決が図れるよう常に向上心を持ち、腕を磨き続けることが今後の課題」

と書かせていただきました。

向上心を持ち続け、腕を磨き続ける努力だけは継続できたのではないかと自負しています。

 

新年を迎えて、初心を忘れずますます精進し、さらなる飛躍を目指す年にしたいと決意を新たにしています。

本年も相変わらずご愛顧の程お願い申し上げます。

(横井盛也)

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