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弁護士の日記帳

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提言3-解読不能の高裁判決

高裁民事の判決は一読して理解できる代物ではありません。
法律家でない人には馴染みがないでしょうが、原判決を参照しながら解読するほかないのです。
例えば、先日受けた高裁判決の判決文は全部で9頁あるのですが、そのうち7頁は、「原判決の補正」で占められています。

 

「第1 控訴の趣意」、「第2 事案の概要」に続いて、「第3 当裁判所の判断」、「1 当裁判所も、控訴人の請求は棄却すべきものと判断する。その理由は、次の2のとおり補正するほかは、原判決に記載のとおりであるから、これを引用する。」と記した後、「2 原判決の補正」が7頁にわたって延々と続いているのです。すなわち、
(1)原判決●頁○行目の「△△」の次に「□□」を加える。
(2) 原判決★頁☆行目から◆頁◇行目までを以下のとおり改める。「ИД∥ш…」。
(3)原判決*頁※行目の「(―_―)」を「(*^_^*)」と改める。
(4)原判決§頁Θ行目の「(・。・;)」を削る。
(5)(6)…といった具合です。

 

原判決は全部で27頁。どこがどう補正されたのか参照しながら読み解くのは至難の業です。
この件では、控訴審で事実関係についての主張が追加されたために大幅な補正が必要になるのもやむを得ない面もあるのですが、誤字脱字等も多数指摘されています。

 

一審被告の当方は、地裁も高裁も完全勝訴ですから、いちいち解読する気など微塵も生じません。

実のところ完全にスルーです。
高裁はいったい誰のために判決を書いているのでしょうか。

 

高裁判決の書き方を改めるべきです。
原判決を補正するなら原判決の電子データを入手して、添削モードで補正して2色刷りにした方がずっと読みやすくなるはずです。
裁判所は思考停止に陥っているのではないでしょうか。
常に改善を心掛けるべき、と感じた次第です。
(横井盛也)

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格差社会と貧困問題

1月3日の当ブログ
≪「21世紀の資本」トマ・ピケティ――格差社会は拡大し続けるのか≫
http://www.law-yokoi.com/blog/?p=1056

に対する批判的な意見を聞きました。
曰く「勝ち組の驕り。拡大する格差を是正し、貧困層を救済すべきである。」と。

 

私は、勝ち組ではありません。
格差が拡大する社会が良いとも思いませんし、貧困層の増大や深刻化を阻止しなければならないと考えています。
批判は誤解に基づくものです。

 

といってもピケティ理論に懐疑的であることは事実です。
ピケティは、各種データを駆使し、格差社会は進行し今後も際限なく拡大してゆくと説いていますが、そうでしょうか。

 

例えば、世界銀行の発表している「世界の貧困に関するデータ」によれば、過去20年の間に貧困層の割合は多くの国や地域で飛躍的に低下しています。
1日1.25ドルの貧困ライン以下で生活する世界中の貧困層の数は、1990年が 19億人だったのに対して2010年は12億人と激減しています。
http://www.worldbank.org/ja/news/feature/2014/01/08/open-data-poverty

 

「富裕層に富が集積すること」と「貧困層が減少すること」は二律背反ではなく、どちらを強調するかによって格差社会拡大の有無について正反対の結論が導き出されます。
ピケティ理論は富裕層への富の集積についての分析に重心を置き過ぎています。
格差社会を論じる際に注目すべきは、富裕層よりもむしろ貧困層の方であるべきです。

バランスを失した議論に説得力はありません。

 

ところで、日本の「子どもの貧困」は深刻です。
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26honpen/b1_03_03.html

平成26年版「子ども・若者白書」(内閣府)によると、「子どもの相対的貧困率は1990年代半ば頃からおおむね上昇傾向にあり,平成21(2009)年には15.7%となっている」、「OECDによると,我が国の子どもの相対的貧困率はOECD加盟国34か国中10番目に高く,OECD平均を上回っている」とのことです。

 

日本国内では世代間の格差こそが問題です。
少子高齢化社会が進展する中、孫の財布をあてにして財政赤字を膨張させるシルバー民主主義を打破すべきです。
若者が安心して子を産み育てることができる社会、そして将来の日本を支える子どもたちが夢と希望を持って成長していける社会を実現することが喫緊の課題だと思います。
(横井盛也)

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法科大学院への補助金傾斜配分-議論の過ち

文部科学省が、来年度に法科大学院に配分する補助金の増減比率を公表したと報道されています。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO82054060X10C15A1CR8000/
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150117-OYT1T50023.html

 

規模に応じて機械的に割り振っていた方法から司法試験の合格実績や教育プログラムの内容に応じて現行比135~50%の差をつけて配分する方法に改めるというもので、実質的な平等を目指す改革として評価できそうです。

 

根本的な発想は、「法科大学院修了者の司法試験の合格率が20%台で低迷し、法曹志願者が減少する一因となっている。」というものです。
何としても法科大学院の再編を促し、修了者に対する司法試験の合格率を高めたいと考えているのです。
今回の傾斜配分で法科大学院52校のうち42校が削減の対象となり、経営困難から募集停止や統廃合がますます加速することは間違いないでしょう。

募集停止や統廃合が進むこと自体は悪いことではありません。

 

でも根本的な発想が誤っています。
逆です。
司法試験の合格率が高過ぎるからこそ法曹志願者が減少しているのです!

 

合格しても法律事務所に就職できない、過当競争で下手をすれば食っていくことすら難しい、そんな弁護士の現状が伝えられる中、法曹を目指そうという若者などいません。

 

司法試験の合格率や合格者数を激減させれば、法科大学院への入学希望者は激増するはずです。
かつて合格者が500人の時代、毎年約2万人の受験生が合格率2~3%の試験に挑んでいたのです。
合格者全員が就職できる(ボスの下で修業が積める)という程度の合格者数に絞れば、さらに給費制を復活させれば、安心して法科大学院を志望することができ、法曹を目指す者の数は増えるはずです。

 

日弁連会長が「自由と正義1月号」の年頭所感で、若者の法曹離れが急速に進行していることを嘆き、法曹養成制度の改革が最重要かつ喫緊の課題だと述べておられます。
そして、「地域適正配置と多様性の確保に留意しつつ、法科大学院の統廃合と定員の大幅削減を進め、その教育水準の向上を図ること」、「司法試験の合格率を向上させ、合格者をます年間1500人程度とすること」などに会を挙げて取り組んでいくとしています。

 

国際化の時代に狭い日本、地域の適正配分など考慮する必要があるのでしょうか。
飽和状態が言われて久しいのにまだ年間1500人の合格者が必要なのでしょうか。

 

ところで今回の傾斜配分比率の決め方なのですが、
「早稲田大は、海外のロースクールへの派遣プログラムなどが評価されて45%が加算され、最も高い135%になった。…東大は法曹実務を英語で学ぶ授業などで35%加算、同志社大は海外大学との単位互換プログラムなどで35%加算となった。」(日経新聞27.01.17)
と報じられています。 疑問です。

 

以前のブログにも書きましたが、法科大学院は、法律実務家を養成する場に徹するべきです。
最低でも2~3年は試験合格を目指して必死になって覚えるべきことを覚え、書いて書いて書きまくるほどの大量の起案をして基礎力をつける時期が必要です。
<合格するまでは合格するための勉強に専念する>といったストイックな環境を提供するのが法科大学院の使命なのではないでしょうか。

 

法社会学や比較法文化論などといった科目は試験後に独学すればよいと思いますし、法曹倫理は合格者を対象に司法研修所で学ばせるべき内容だと思います。
まして海外留学や英語で授業を受けるくらいなら、1本でも多くの訴状や準備書面を起案すべきだと思います。
(横井盛也)

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不朽の三島文学-単なる余興

突然ですが、私が作った「国語の問題?」と「解説?」です。

 

【問題】
次の文章は三島由紀夫「雨の中の噴水」の中の一節です。「○○○○!」に入る言葉(4文字)を答えなさい。

 

その一言を言っただけで、自分の力で、青空も罅割れてしまうだろう言葉。
とてもそんなことは現実に起こりえないと半ば諦めながら、それでも「いつかは」という夢を熱烈に繋いで来た言葉。
弓から放たれた矢のように一直線に的をめがけて天翔ける、世界中でもっとも英雄的な、もっとも光り輝く言葉。
人間の中の人間、男のなかの男にだけ、口にすることをゆるされている秘符のような言葉。
すなわち、「○○○○!」

 

【解説】
入学試験のシーズンです。入学試験に国語はつきものですが、これがまた厄介なものです。
私の時代もそうでしたが、小説の一部を勝手に切り取ってきたりして、主人公の気持ちを50字以内で説明しなさいとか、主人公がなぜそのような言葉を発したのか理由を説明しなさいとか、どうでもいいようなことを根掘り葉掘り聞いてきて受験生を困らせるのです。
塾や予備校では、「正解を導くための考え方がある。」などと教えているようですが、果たしてそうなのでしょうか。
上記のような悪問であれば、正解などわかるはずがありません。
そもそも小説に正解なんて必要なのでしょうか?

 

三島由紀夫の短編「雨の中の噴水」。
傑作です。
三島の思想信条や行動様式には反感を覚えるのですが(私は右翼も左翼も嫌いです)、文筆家としての三島を尊敬しています。
比類なき言葉の魔術師。卓抜した表現力を持つ文豪。間違いなく彼は天才です。

 

ところで、問題の答えですが、「アホバカ!」でないことは明らかです。
では「愛してる!」でしょうか。
違います。三島ほどの人物がそんな陳腐な言葉を「世界中でもっとも英雄的な、もっとも光り輝く言葉」などと大仰に形容するはずはありません。

 

「○○○○!」は、この短編に登場するごく普通の少年が放つ決定的な言葉です。
少年と少女の可愛らしいコントに残酷さと俗悪さを混入する強烈な言葉。
青空が罅割れるような言葉であり、「いつかは」という夢を熱烈に繋いで来た言葉であり、かつ秘符のような言葉なのです。
正解は新潮文庫「真夏の死-自選短編集-」(三島由紀夫著)の331頁にあります。

 

たった13頁の短編ですが、読めばなぜ「○○○○!」なのかがよくわかりますし、それがなぜかくも大げさに形容される言葉なのかが理解できます。
三島の才能に脱帽。お奨めの一編です。
(横井盛也)

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治安大国日本-刑法犯12年連続減少

警察庁がまとめた昨年1年間の刑法犯認知件数(暫定値)は121万2240件で、12年連続で減少したと報道されています。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08H4N_Y5A100C1000000/

 

認知件数ですから届出されていない暗数がどれだけあるか不明です。
(昨年発覚した大阪府警の不正計上のようなことはないと思いますが)統計上の処理による誤差も考慮に入れる必要もあるのでしょう。
確かに振り込め詐欺等の知能犯罪は増加しているようですし、社会の耳目を集める凶悪犯罪がなくならないのも事実です。
でも、犯罪が減っていることは、実感としても確かなことだと思います。

 

私が生まれた50年前と比較すると差は歴然です。
殺人は、1964年が  2366件に対して、2013年は  938件。
傷害は、1964年が  61282件に対して、2013年は 27864件。
強姦は、1964年が  6857件に対して、2013年は   1409件。
半世紀で激減しています。
「犯罪情勢は悪化し、凶悪犯罪は深刻化している」などという体感治安の悪化は根拠を欠きます。
有史以来、我々は最も平和で安全な世の中に暮らしているのだと思います。
安全神話が毫も揺らいでいないことは、外国との比較でも明白です。
警察白書  http://www.npa.go.jp/hakusyo/index.htm
犯罪白書  http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/nendo_nfm.html

 

防犯カメラが街の隅々にまで設置されるようになったから?
教育が充実し、遵法精神豊かな国民が増えたから?
法定刑の引上げを始めとした刑法等の改正を次々に行ったから?
暴対法のおかげ?それとも死刑の威嚇力?
マスコミの犯罪報道が以前ほど過激でなくなったから?
生活保護等のセーフティーネットが機能しているから?
刑事司法や刑事政策が充実しているから?
弁護士が有り余るほど増えたから? ←あまり関係ない (-_-;)。
何がどの程度影響しているのかはわかりませんが、何はともあれ犯罪が減ることは喜ばしいことです。

 

さらに安心安全な世の中を目指して不断の努力を続けることは当然のこととして、日本が治安大国であることを誇りに思います。
(横井盛也)

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