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「法曹人口の在り方について」3 - マルサス『人口論』から読み解く法曹人口問題

政府方針となる「法曹人口の在り方について」は、今後とも法曹人口を増加させるべく司法試験の合格者が1500人を下回ることのないよう必要な取組みを進める、というものです。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hoso_kaikaku/dai20/siryou5.pdf

 

現状認識が誤っており将来の展望が甘すぎます。
この国の役人、弁護士、学者らに将来を見通す力が欠けています。
それのみならず、歴史や古典から学ぶ力も欠けていると思います。

 

英国の古典派経済学者トマス・ロバート・マルサス(1766年~ 1834年)の名著『人口論』(1798年)は、社会と人口の関係について鋭い指摘を行っています。
(名前は似ていますが、「マルクス」とは、まったくの別人です。)
確かに「人口論」が著された時代には、避妊といったことが不可能であるなど社会環境が大きく異なっているため同書をそのまま現代に当てはめることはできません。
しかし、その社会における人口が適正でないことが、その社会に様々な歪みや害悪をもたらすことについての指摘は現代でも妥当するのだと思います。
過剰人口の災厄は、人類が生命体である以上、神から与えられた永遠に克服すべき試練であり続けるのです。

 

マルサス『人口論』の前提は次の2つです。
第一は「人間の生存には食料が必要」、 第二は「人間の情欲は不変」。
誤解を恐れず極々簡単に整理すれば、ここから、次のような論理が展開されています。
<人口は幾何級数的に増加するが食料は算術級数的にしか増加しないから、人口は常に食料の水準を越えて増加する。
この結果必然的に不均衡が発生する。
不均衡が発生すると、人口増加を抑えようとして貧困、飢饉、戦争、病気、退廃や晩婚化・非婚化による出生の抑制が起こる。
人口増加の継続が、食料の継続的な不足をもたらし、したがって重大な貧困問題に直面することになる。
実際の人口を食料と同じレベルに保たせるのは、貧困と悪徳である。>
<そしてマルサスは言うのです。「人口が増加するか、停滞するか、それとも減少するかは、まさしく人々の幸福、あるいは不幸の度合いに依存するのである。」と>

 

人口増加を抑制するものは、貧困、飢饉、戦争、病気といった死亡率を上げるもの(積極的妨げ)と計画的な避妊、晩婚化・非婚化による出生の抑制といった出生率を下げるもの(消極的妨げ)に分けられます。
前者を避けるために後者を選択すべきであることは明白です。
世界史における戦争の契機の多くは人口膨張圧力によるものであり、人類は永く戦争と疫病によって生態系における適正人口を保ってきました。
最近になってやっと人口増加を抑える避妊法を開発し出生の抑制を可能とし、不均衡に対する積極的妨げを回避するようになりました。
神の試練を一つ乗り越えたのだと思います。

コンドームが世界の平和に大きく貢献しているのです。

 

『人口論』に法曹人口に当てはめてみれば、次のようになると思います。
≪法曹人口は政府方針によって不可避的に増加するが、日本の人口は減少に転じており案件は増加しない(どころか減少する)から、法曹人口の供給は常に需要の水準を越えて増加する。
この結果必然的に不均衡が発生する。
不均衡が発生すると、法曹人口増加を抑えるべく法曹の貧困、飢饉、犯罪、病気、退廃、【本来なら新たな法曹の供給に対する抑制】が起こる。
法曹人口増加の継続が、生活資源の継続的な不足をもたらし、したがって重大な貧困問題に直面することになる。
実際の法曹人口を食糧と同じレベルに保たせるのは、貧困と悪徳である。≫

 
仮に司法試験の合格者が毎年1500人でも9年後に弁護士の人口は5万人を超えるのです。
飽和状態の現在よりさらに法曹人口増加を目指す(避妊を試みない)など、正気の沙汰とは思えません。
(横井盛也)

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