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日本国憲法改正について 2

現行憲法は、改正手続のハードルが余りに高すぎます。

現在ないし将来の国民の意思が憲法制定当時の(形式的な)国民の意思によって不当に厳しく縛られている弊害を正しく認識すべきです。

さしあたって96条の改正を目指すことは、理にかなったことだと思います。

 

確かに、憲法は国の基本法であり頻繁に変わるようでは、政治も社会も安定しませんし、基本的人権の尊重や民主主義といった普遍的な理念は、改正にはなじみません。

 

しかし、現行憲法を唯一最高のものと絶対視するのは、権威主義的な発想であり、信仰にも似た思考停止状態というほかありません。

自由な議論を戦わせ、不断に選択され続けられるものこそが真に守るべき価値なのであり、不合理な心情から議論自体を放棄すべきではありません。

現代のことは現代の世代が、将来のことは将来の世代が責任をもって議論して判断するという仕組みを作るべきです。

 

改正手続のハードルが高すぎることから、すでに多くの「解釈改憲」が行われ、憲法空洞化の問題が発生しています。

 

例えば、現行憲法33条には「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」とありますが、刑事訴訟法で「緊急逮捕」が認められています。

これについては、「事後とはいえ、逮捕に接着した時期において逮捕状が発せられる限り、逮捕手続全体としてみるときは、逮捕状に基づくものということができる」といったこじつけの解釈で違憲ではないとされています。

憲法33条の素直な解釈からは、現行犯逮捕と令状逮捕しか読み取れないにもかかわらず、制度として必要な緊急逮捕を無理矢理の解釈によって認めているのです。

 

また、現行憲法89条は「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」と定めています。

素直に読めば、私立学校や慈善・博愛の団体の助成のために税金を支出することは禁止されているということになりそうです。

でも助成は現に行われていますし、今後も行われるべきです。

これについては、私立学校振興助成法を作って「所管官庁の管轄に服しているから公の支配に属している」という形をとったり、社会福祉法人等を作って間接的に支援したりといった姑息な手段を使って税金を支出する根拠にして憲法問題を回避しているのです。

 

憲法の不備や欠陥をこじつけの解釈や姑息な手段で補うのではなく、条文を改正して現実の問題に正面から対応すべきだと思います。

(横井盛也)

 

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