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大阪市の”自殺”を許してよいのか ~ 迫る住民投票

大阪市を廃止して5つの特別区を設ける、「大阪市解体→地盤沈下」構想の住民投票が迫っています。
我が家にも投票所入場券や投票公報なるものが届きました。
(選挙公報によく似ていますが、こんなものを見たのは初めてです。)
街には各政党の街宣車が走り、駅前では様々なビラが配られています。
大阪弁護士会報4月号では <「大阪都」構想を考える~賛否両方の立場から~> という特集が組まれていますし、
事務所には「都構想に反対する弁護士の会への入会のお願い」などといったFAXが送られてきたりします。
大阪は今、とってもホットな状況なのです。

 

「長い物には巻かれろ」を人生訓に、あえて反対することより深く考えずに賛成に回ることが多かった私なのですが、

今回ばかりは「反対!」です。

住民投票ができるのは大阪市民だけで、それ以外の大阪府民は対象ではありません。
それもそのはず、大阪市解体で不利益を被るのは大阪市民だからです。
大阪市の解体、特別区の設置は、大阪市民にとって、何のメリットもありません。
一度解体されてしまえば、永遠に大阪市は復活できません。
大阪都構想は、その実、大阪市の”自殺”に他ならないのです。

 

賛成派は、「二重行政のムダをなくす」という点を強調し、

<府のりんくうゲートタワービルと市のワールドトレードセンタービル>、<府のりんくうタウンと市の咲洲コスモスクエア地区>の共倒れの例を挙げるのですが、

これらはバブル期に将来の展望を見誤ったことによる失敗例です。
病院、体育館、図書館、大学、美術館など多くの施設は、府立も市立も数多くの人に利用されています。
府と市の二重行政が問題なのであれば、府と市が協調する仕組みを作り上げれば済むはずです。

実際、昨年には地方自治法が改正され、政令指定都市と都道府県は、事務の処理について必要な協議を行うため(つまり、二重行政の弊害をなくすため)指定都市都道府県調整会議を設置することが義務付けられるようになりました(同法252条の21の2)。
協議が整わない場合には、総務大臣に勧告を行うよう求めることができ、総務大臣は国の関係行政機関の長に通知するとともに勧告調整委員を任命して意見を求め、その上で勧告を出すことなどが定められています(同法252条の21の2、3)。
この法改正で二重行政の解消が期待できます。

 

5特別区への分割には、新庁舎の建設やシステム改修に膨大なコストとエネルギーが必要となります。

大阪市の職員は、大阪府、5つの特別区や一部事務組合の職員となるのですが、

適材適所に配慮した職員の異動、事務の引き継ぎを行うだけでも大変な労力がかかります。
こんな内向きなことに金やエネルギーを注ぎ込むことこそムダです。

 

これまで大阪市という1つの役所で行っていたものを5つの特別区が行うことになり、

同様の部署を5つ作ることで行政コストが上がります。
国民健康保険、水道、システム管理、施設管理などについては5特別区で一部事務組合を設立するというのですが、それが驚くほど広範囲の事業に及んでおり、

「単に三重行政になるだけやおまへんか?」、と思うのです。

 

5つの区割りについても問題が多すぎます。
まとまりがあるのは、中央区と北区だけで、その周りを東区と南区と湾岸区の3つに分けただけという感じです。
住之江区は分割されますし、例えば鉄道が繋がっておらず距離的にも離れている旭区と生野区がどちらも新しくできる東区、といわれても釈然としないのです。

 

東京の場合は、23区の人口が東京都の約7割だからうまくいっているのです。
大阪市の人口は大阪府のたった3割にしか過ぎません。
半人前の5つの特別区が府の中で埋没してしまうことは火を見るより明らかです。

 

5月17日まであと2週間。運命のカウントダウンが進んでいます。
(横井盛也)

 

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ドローンで変わる近未来の世界~「ドローン交通法」が必要なのでは?

「鳥になって大空を飛んでいるかのようなフライト撮影が可能」が謳い文句の無人航空機ドローン。
首相官邸の屋上で見つかって以来、その知名度や関心度は一気に上昇しました。

飛ばしてみたいと考える人は今後ますます増加することでしょう。

 

ドラえもんのタケコプターを想像させる優れものです。
近い将来、椅子を付ける改良が施され、誰もが空中散歩を楽しめる日が来るのでは?

自動車やバイクに代わってドローンの時代がくるのでは?
そんな予感すらするのです。
科学技術の進歩はすさまじく、操縦範囲、航続距離、積載量が飛躍的に向上することも想定するべきです。

 

このドローン。爆発的に普及し、人類に大きな貢献をすることは間違いありません。
災害現場の調査、建造物の検査、放射線の測定、火山の監視、農薬散布、警備、宅配サービスなどでの貢献が期待されていますが、近い将来、軍事目的、犯人追跡、医薬品の供給、介護サービスなどにも力を発揮するかもしれません。
一方、効用が大きい反面、テロによる悪用、人との衝突、墜落、プライバシーの侵害といった負の側面も大きなものになることを覚悟すべきです。

 

歩行中に空からドローンが落ちてきたらどうするの?
家の中を覗かれたりしないの?
ストーカーされたらいやだわ!

 

何らかの規制が必要なことは明白です。
政府は、航空法改正による飛行規制、ドローンの所有を登録制にすることなどを検討しているようです。
現在は、空港周辺等以外については高度250m未満までであれば自由に飛ばせる野放し状態ですから、早急にできることをすべきだと思いますが、航空法改正や所有者の登録制などといった小手先の対策で将来の安全や平和が守れるとは思えません。
今回は首相官邸に飛来したという事件だったので、ドローンを甘く見ているようです。
世の中をドローンが飛び回る事態を想定して法整備を進めるべきです。

 

「道路交通法」のような「ドローン交通法」が必要なのではないでしょうか。
ドローン操縦者を免許制にし、ドローンの飛行ルールを定め、飛行目的を限定したうえで目的外使用に対する罰則規定を盛り込む。
緩和すべき規制は緩和する。厳格にすべき規制は厳格に。
ドローンに関していえば、有効な利用を促進するためにも厳格なルール作りが必要なのだと思います。
(横井盛也)

 

PS 今回の事件の一連の報道の中で、<警察庁が全国の警察本部に対し、原発や官公庁など重要施設の上空の警備を強化するよう指示し、全国の重要施設で警戒が強化されている。>といった記事を見かけました。
上空の警備?―― 本当に警察庁がそんな指示を出したのかどうか知りませんが、警察官が空を見上げて目を光らせたところで何ができるのでしょうか。

 

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私は大阪市民でなくなるのか?~大阪都構想の行方

大阪市を廃止するのか、存続するのか。
住民投票が5月17日に行われます。

 

大阪市民である私にとって他人事ではありません。
報道では賛否は拮抗しているとのこと。私の周りでも拮抗しています。
昨年9月にイギリスからの独立を問う住民投票を行ったスコットランド人のような心境なのです。

 

この住民投票。平成24年に成立した「大都市地域特別区設置法」に基づくもので法的拘束力を持つものとされています。
単に住民に意見を問う地方自治体条例に基づく住民投票とは違うのです。
過半数の賛成があれば、平成29年4月1日に大阪市は廃止となり、5つの特別区(北区・東区・南区・湾岸区・中央区)が設置されます。

 

法律の制定、そして住民投票の実施にまでこぎつけた橋下徹・大阪市長の手腕、実行力には敬服します。
並みの市長であれば、とっくに頓挫していたことでしょう。
愛する大阪市がなくなる、というのであれば、それはその時。覚悟はできています。

 

でも、都構想のメリットはデメリットより大きいのでしょうか。

 

全戸配布されている「特別区設置協定書について」という大阪市作成の40頁の説明パンフレットでは「二重行政の無駄」が強調されているのですが、的外れだと思います。
大阪市民としては、府と市が競い合うことで二重の行政サービスを享受しているのであって、そのメリットを捨てる必要はありません。

 

例えば、大阪府立大学と大阪市立大学が存在することが無駄なのでしょうか。
府立中央図書館と市立中央図書館、府立体育館と市立中央体育館、マイドーム大阪と産業創造館、ドーンセンターとクレオ大阪。
大阪市民にとっては、よく似た施設が2つあることは、デメリットというよりむしろメリットだと思うのです。

 

大阪府直轄の特別区になることで、何がどう変わるのかも今一つピンと来ません。
東京都の特別区民が大阪市民より暮らしやすさを実感しているのでしょうか。
特別区といっても単に5つの中規模の”市”に分裂するだけのことになりはしないか心配です。

 

5つの区割りは、いつの間にか出来上がっていたという感じで、最近まで自分が何区民になるのかさえ知りませんでした。
東京23区に対して、大阪5区なんてみじめ過ぎます。
大阪市は現在24区なのだから、24区にすべきです。
大阪都構想というなら、名称も大阪都とすべきです。

 

二重行政の弊害の解消は、府と市の協調を図る仕組みを作ることで可能なのではないでしょうか。
その方がずっとコストや労力は少なくて済むはずです。

 

これまで当然のように存在し、いささかの疑問も感じていなかった大阪市がなくなるのか否か。
心して投票しようと思います。
(横井盛也)

 

参考までに2012年12月2日の当ブログです

http://www.law-yokoi.com/blog/?p=454

 

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サッカーボール事件で親の監督責任否定~最高裁平成27年4月9日判決

校庭から転がり出したサッカーボールを避けようとして転倒事故が起きた場合、ボールを蹴った子供の親が監督責任を負うか、が争点となった訴訟で最高裁第一小法廷は親の監督責任を否定する画期的な判決を下しました。

 

ネット上で判決全文が公開されています。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/032/085032_hanrei.pdf

「親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は、ある程度一般的なものとならざるを得ないから、通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は、当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り、子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない」
民法714条1項を正しく解釈したもので極めて妥当で正当な判決だと思います。

 

判決によると、校庭にあったサッカーゴールの後方約10mの場所には高さ1.3mの門扉があり、その左右には校庭に沿って約1.2mのネットフェンスが設置されており、校庭と道路の間には幅約1.8mの側溝があっということです。小学校の周辺には田畑も存在し、道路の交通量は少なかったとされています。
11歳の小学生が校庭で友達と普通に遊んでいて、蹴ったボールが偶然に門扉を越えて路上に転がり出て、それを避けようとしたバイクの85歳の男性が転倒して負傷し、入院中の約1年4か月後に誤嚥性肺炎で死亡したとのこと。

 

たまたま通りかかった老人及びその家族らにとって不幸な出来事であることは間違いありませんが、同時に子供やその親にとっても不幸な出来事です。
事故を起こしてしまったことに苦悩する上に何千万円もの損害賠償を請求されるのです。

 

これまで「被害者救済」の美名のもと、民法714条1項の監督義務を怠らなければ責任を免除されるとのただし書きは無視され、本件の1審、2審をはじめ、ほぼ全ての裁判例が親の責任を機械的に肯定してきてきました。

原審は、ゴールに向けてサッカーボールを蹴ることはその後方にある道路に向けて蹴ることになり、蹴り方次第ではボールが本件道路に飛び出す危険性があるから、親にはこのような場所では周囲に危険が及ぶような行為をしないよう指導する義務、すなわちそもそも本件ゴールに向けてサッカーボールを蹴らないよう指導する監督義務があり、これを怠ったとしています。

蹴り方次第ではボールが本件道路に飛び出す危険?-こじつけが過ぎます。

 

事故が起こることなど想像もできない状況下で、普通に遊んでいる小学生の行為によって、たまたま人身に損害を生じさせた場合にまで親の監督責任を問うのは余りに理不尽です。
しつけができていない子供が包丁を振り回して第三者を刺殺した場合とは全く状況が違うのです。
「法は不可能を強いるものではない」という法諺がありますが、裁判所は民法714条1項に関しては、深く考えないまま監督義務者に不可能を強いてきたのだと思います。

 

現実社会は完璧なものではなく、完全に安全でも平和でもありません。
不幸にしてどちらも悪くないという偶発的な事故が起こることも避けられません。
<一方が被害者で、他方が加害者>と単純に割り切り、<被害者なのだから加害者の責任をどこまでも追及するのは当然>という考え方や風潮は、世の中を幸福にするものではありません。
場合によっては、加害者を大きく傷つけることにもつながります。

 

避け難いリスクに対しては、人身傷害補償保険や生命保険に加入するなどの自己防衛で対処すべきなのではないでしょうか。
(横井盛也)

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「弁護士 転ばぬ先の経営失敗談」-成功談よりためになる失敗談

人間、誰しも失敗するもの。弁護士だって同じです。
大切なのは、失敗から何を学ぶかなのだと思います。
失敗は、「成功の素」です。
失敗から何かを学ぼうとする謙虚さが必要です。

 

そんな殊勝な心掛けから、
①「弁護士 転ばぬ先の経営失敗談」(失敗事例研究会代表弁護士北周士編著、第一法規、2500円)、
②「弁護士の失敗学 冷や汗が成功への鍵」(高中正彦ほか編著、ぎょうせい、3000円)
の2冊を読んでみました。

 

①は、20人以上の弁護士から集めた主に事務所経営に関する40の失敗談を赤裸々に公表するヒヤリハット事例集。
手軽に読める平易な内容でありながら、ポイントを突いています。
文字数の割にちょっと値段が高いような気がしますが、入門書として読んで損はないはずです。

 

②は、7人の弁護士の共著による本格的なテキストという感じで、読み応えがあります。数多くの弁護過誤判例や懲戒事例を取り上げて、失敗しないためにはどうすべきであったかを丁寧に論じています。
この本に書いてあることをすべてマスターし、実践しさえすれば、もはや失敗のしようがないのでは、と思わせるくらい内容が充実しています。

 

大きな失敗をすることなくここまでやってきましたし、今後も何とか軌道に乗ってやっていけそうな気になっているのですが、たまたま運が良かっただけのことかもしれません。
例えば、「仮執行宣言の付されていない勝訴判決に対して、相手が控訴。仮執行宣言を求める附帯控訴を忘れて上告審確定まで執行できない。」という事例。
これまでこんな場面に遭遇していなかっただけのことで、請求認容の勝訴判決に浮かれていたら陥りかねないミスだったと思います。

小さなミスや僅かな油断が取り返しのつかない大きな失敗に結びつく。
それが責任ある仕事をする者が常に抱えるリスクです。

 

世に成功者の自伝、評伝、合格体験記などが溢れており、読めば(自己啓発本と同様)成功者や合格者になった気分が味わえて爽快です。
でも、むしろ本書のような失敗談や不合格体験記を読む方が実際にはためになるのだと思います。
他山の石として活用できる2冊です。
(横井盛也)

 

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